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自分の中の両極を、自分の中のけだものを。 制御し飼い馴らす方法を探す旅。
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幸福の在り処【res:】
うちのゼミには大学に5年通ったヤツが三人いる。
1人はもちろん俺。
バイクで事故ったのが原因で試験にも出られず、授業を受ける気もせず、結局半年間大学生活を無駄に過ごした。
1人はコンタ。
一回生の春休みに親父さんが失踪した。事態が収束するまで授業料の関係もあって一年間の休学届を新学期に合わせて提出した。
幸い親父さんは秋口にふらりと帰ってきた。少しノイローゼ気味だったというが、ほどなく復調し再就職先も見つかった。
そしてもう1人がミカサ。
俺が事故ったのと同じ頃、彼女の母親が末期ガンだということが分かった。母親には告知がされ、その母親のたっての願いで在宅で最後を迎えることになった。その介護のため、いや少ない時を母親と過ごすため彼女は大学2回生を切り捨てた。余命半年、といわれたらしいが本当にその通り半年後には帰らぬ人となった。
新学期、新しい2回生の中でこれまでそんなに親しくなかった俺とコンタとミカサは顔をあわせ、当然のように妙な連帯感で結ばれることとなった。
特別な仲間だ。
昨日、その三人で飲んだ。
卒業式がすむとすぐ、ミカサは就職先のOJTの為名古屋に向かう。
実質、最後の飲み会になりそうだった。
安いのと、気が知れているのとで場所は俺のバイト先の居酒屋に決まった。
ミカサもコンタもよく来るのでハナテン(♀。俺の同期フリーター)やアニキ(♀。超古株フリーター)にとっては常連客だ。
小座敷を開けてもらい、料理長のはからいでちょっと贅沢な肴と、とっておきの「魔王」でおおいにもりあがった。


あ、そうや、
とコンタが生春巻きの最後の一切れをミカサの皿からかすめとって言った。
「俺さ、いまこいつとつきおぅてんねん」
そして顎で俺を示した。
俺は飲んでいた男山をぶ、と吐きそうになった。

えぇぇぇぇ?
言うの?

っつか事前になんかあんだろが、フツー。
俺はなにも聞いてない。
取られた生春巻きを奪還せんと伸ばされていたミカサの箸が止まっていた。
「・・・なんて?」
「うん、今れんと俺、つきおうてんねん」
かたまったミカサの前でコンタはゆうゆうと生春巻きを味わい、もう一皿頼もうや、と言った。
「おまえにはゆぅとかな反則やろ、思てな」
「・・・マジで・・・?」
ミカサの目が俺に向けられていた。
「ホンマなん?れん」
「ああ・・・ホンマ」
うふぁー、とミカサが素っ頓狂な声をあげた。
「ウソやろー!いつからよー!っつかなんでよー!」
ミカサの顔に嫌悪はなかったがもちろん手放しの歓迎の色もなかった。
「つきあってるて・・・・えぇぇぇぇ」
ミカサはひとしきり騒ぐとジョッキにけっこう残っていたビールを一気に飲み干した。
「だからかぁ・・・・サナダはともかくカエちゃんまで振られたのって・・・・でも女的には癪やな、振られた理由が〝彼氏がおるから〟っちゅーの・・・・っつか、れんもコンタもそういう人種やったっけ・・・・いや違うよなぁ・・・・」
ミカサは激しく混乱しているようすだった。
コンタはとおりがかったハナテンにミカサ用の中ジョッキと生春巻きの追加をオーダーしている。
俺はただ状況を見守っているしかなく、ちびちびと男山を飲みつづけた。
もともと俺はリアルでは饒舌なほうではない。酒がはいると舌は滑らかだが、こんな状況では酔いも醒める。
「あんたらホンマ爆弾やな・・・」
「そぉか?」
コンタが笑って、ショック?と聞いた。
「そらショックやわ・・・・・」
そして更にコンタは言った。
笑いを残した声で、でも目は真剣に。
「俺らがそういう関係って、友達的に、イヤ?」
「んーんーんー・・・・イヤ、とかじゃないねん・・・んー・・・ただ・・んー・・・ちょっとびっくりしたかも・・・」
その時場の雰囲気を変えて明るい声のハナテンが生ビールを運んできた。
ハナテン、ナイス。
何も知らないハナテンんーんー、と唸っているミカサの前にどぞー、とジョッキを置いて何かコンタと明るく会話して去っていった。
「いろいろ質問していい?」
ええよ、なんでも、とコンタが機嫌よさげに笑って答えていた。
俺にはこんな度胸はないぞ。
自分たちが今世間で言う「ゲイ」的関係であることに否定的なわけでは決してない。むしろ俺はコンタとこの距離この関係でいることを誇りたいぐらいだ。
でも、普通は怖いだろ?
親しい人間だからこそ、親友だからこそ。
俺たちのあり方を否定されたら。
そして今後の関係を拒否されたら。
コンタはいつもどおりおっとりと笑っている。
「なんで、私に・・・告白っつか、暴露するつもりになったん?私がみんなに言いふらすとか、気持ち悪いとか言うとか考えんかったん?」

「あはは。そんなん思いもせんかったわ・・ミカサとはつきあい長くなりそやろ?俺らかて味方の1人ぐらい欲しいやん。」

コンタが笑った。

「頼むわ、味方になってぇな、ミカサ。」



ミカサが、笑った。

「アホか。そんなん頼まれんでも、ちゃんと味方したるわぃ。」



二人がんくく、と笑って、俺も少し笑った。
コンタにはかなわない。



その後はもぅ大変だった。
「どっちが先に好きになったん?」
「えっちとかどうやってんの?」
「女の子にはもぉ興味ないの?」


等々。
質問の嵐。
一つ一つに丁寧にコンタが答え、セックスに関しては俺が、ミカサが赤面して悲鳴をあげるほど詳しく(笑)説明してやった。



「なぁ・・・そんでさ、そのカミングアウト、他の子とかにもするつもりなん?」


ひとしきり質疑応答が落ち着いたころ、ミカサがそう切り出した。
そう。
俺の中ではそういう決心はつかない。
それに俺は基本的に秘密主義だ。
しかしコンタのこれまでの行動パターンから推測すると、謝恩会場で恋人宣言とかやってしまいそうだ。

「なんで?別に言う必要ないし。第一俺、これまでも誰とつきあってるとかみんなにゆぅたことないやん。ミカサには隠し事ほぼナシでこれまできたからゆぅただけ。
基本的に俺、男とつきあうのがかわったことやっていう頭ないしさ。誰と付き合ってるんや、って聞かれたら、れんです、って答えるだけの話。」




コンタ、やっぱおまえかっこいいなあ。(←痛。




「バカップル・・・」






はい。ごもっともで。






「せやけど、れん、コンタはともかく、あんたが一番意外やったわ・・・あの女好きが、ってね。まぁ最近よく笑ってるなぁ、とはおもってたけど、まさか相手がコンタとはね。蓋あけてみたら、なるほど、やけど。まさか、前みたいに遊びでつきあってるわけちゃうやんな?」

会計で自称・コンタファンだというハナテンに捕まって話し込んでいるコンタを外でまちながらミカサが真剣な声色で言った。
だから俺もマジメに答えた。
「あのなぁ。ナンボ俺でも遊びで男とはつきあえんで」
「ならええけど。なまじあんたの昔の素行知ってるからなぁ・・・コンタ泣かしなや。」
「もぉ、昔の俺ちゃうもん。」

驚いたようにミカサはきょとんとして、それから大声で笑った。
「なぁんや、メロメロなんはあんたの方やったんかぁ・・・」
「うるさい」
「顔赤いで」
「赤ない」
「れんちゃん純愛初体験~♪」


酔っ払い女が楽しげに歌いながら人気のなくなった車道の縁石の上をふらふら歩いていくのを俺は見つめていた。
コンタがいつのまにかおいついていた。
俺の後ろからおーっ、ミカサァ、と呼んだ。
振り向いたミカサに、
「サービスショットーーー」


コンタのキス。
さける暇も抗う余裕もないぐらいの早業で奪われた。
「ボケー!サービスしすぎじゃー!」
ミカサが走ってきた。
走ってきて、キスをやめた俺たちの間に割って入った。
割って入って、腕をからめてきた。
小柄なミカサは俺たちの腕にぶらさがるようにして、笑った。
いや
泣いていた。

「あんたら、5年、ありがとなぁ・・・あんたらいてへんかったら、私大学やめてたかもしれん・・・・いろいろあって、いろいろあるやろけど・・・・私ら絶対、幸せになろうなぁ・・・・」

なに泣いてんねん、とコンタが笑った。泣くとこちゃうやろ。



私ら絶対、幸せになろうなぁ。





心に残った。
コメント
この記事へのコメント
■ゆか■コンタ・・・・性格オトコマエだからね。俺が言うのもなんだけど。男からの信頼が厚い男です。俺みたいに自分の中で「いるもの」「いらないもの」の振り分けをしていないのでみんなに優しい。でも長所は短所・・・(笑)
嬉しくないっっ嬉しくないっミカサのセリフ。なんか癪やん、そう思われるの・・・ええかっこしたいわけとちゃうけどあいつはそれをネタに遊びやがるし。弱みをにぎられた感が否めない・・・w

■めぐ■女はしつこいから・・・(笑)めっちやウケた(笑)女ってすごい前のすごい細かいこと覚えてるよね。肝心なことはちっとも覚えてないくせに・・・(ぐは。)
コンタの方が俺より思考がボーダーレスなんやろね。思想が柔軟、というか。
ミカサはねー。
やっぱつきあい長いし、距離のとり方が絶妙にうまい。電話の声だけで俺の機嫌がわかる数少ない女です(笑)

■シグ■お粗末さま・・・って!オイ!
ちょっと早くないですか・・・?(汗)・・・まあ昔の俺もそんな感じだったからいえた義理ではありませんが。

■そら■本人の前で素直にびっくりしないところが見栄っ張りのキミらしいよね。合点がいかないって・・・「こんなにいいオンナが前にいるのに」・・・って?(笑)
確実に往生際は悪いよね。好きなものに対しては。

■はん■そだね。まぁお互いにキツイとこ乗り越えてきた、っていう仲間意識は強いよね。誰かの幸せを祈るとき、多分自分も誰かに祈ってもらってる、そんな気もします。

■しんご■どこでそんな噂が・・・(笑)まぁ8割方ホンマやけど(縛。もとい爆。)
・・・っつか照れるんやけど。お前から褒められるとなんかこそばいワ・・・w

さんきゅ。お前もええ友達や。

■こみゅ■またねー・・って!
こみゅまたどっか旅に出ちゃうの・・・?

■まり■あはは、でもミカサはサディストで女の子と長続きしない俺のことはクソミソだけどね。酒飲むたびに説教くらってたし。でもまぁそういう意見をしっかりもってるところが俺は好き。彼女の意見には自分というものがあって妙に頷ける・・・性癖はなおりませんが。コンタ縛ってるなんて言ったらまたキレられそうだからいいませんw

■どんこ■あらら・・・泣かせてしもたんや・・・反省。
っつかどんこはオマタも涙もろそうだけど・・・w(公然セクハラ。)

■きき■ええぇぇどんこといいキキといい・・・なんで涙が・・・ミカサにつられたの?(笑)
筋肉痛が翌日に出るんならいいじゃないですかー♪2日後とかやったらブルーじゃない?w
こちらこそいつもありがとう。いろいろと。文章にがっつり取り組む励みになります。

■アコさん■俺、中学・高校と腐ってたから友達、と本当に呼べる奴おらんかったんですよね。
ホンマに大学行って「友達ってこういうことなのね」と納得。まぁ、大事な友達を縛ったり泣かせたりしちゃってるわけですが(笑)まぁコンタはすでに恋人ですし。
コンタともし別れたら、友達減っちゃいますね・・・・(汗)
2006/03/08(水) 22:48:23 | URL | 管理人:恋児 #0iyVDi8M[ 編集]
いい友達持ってるなー。
俺にはそんな友達おらんぞ?
一生大事にしろよ?一生仲良くしろよ?

それだけ話せる友達って一生の間に何人も会えんぞ?

そんなレンジの日記を見ながら、ビールを飲む…。
うまい肴だ・・・。
2006/03/06(月) 21:28:12 | URL | アコギスト #-[ 編集]
どんこちゃんじゃないけど、昨日この記事を読んで不覚にも泣いてしまいコメントできなかったΣ(ノ∀`*)ペチッ
おかげで昨日はいろいろと頑張りすぎて今朝は下半身が筋肉痛です。(なんのこっちゃ。笑
うまく言えないのだけれど、心が震えました。
三人にありがとうって言いたい気持ち。(*´ー`)

2006/03/06(月) 10:43:47 | URL | KIKI #A9cyFz3c[ 編集]
アハー。
最後泣いちゃったわい。
年取ると涙腺がゆるくオマタはキッチリで困ったもんじゃい(ノ∀`*)ペチョン!
2006/03/06(月) 09:36:38 | URL | どんこ #-[ 編集]
すごく幸せな気持ちになりました☆
・・・まぁ、恋児さんの日記読んでるといつもですけどねww
ミカサさん、コンタさん、そして恋児さんみんなに惚れました。笑
そういう友達って良いですね~。何をカミングアウトしても受け入れてくれて、真面目に話し聞いてくれる存在ってありがたいですよね(*´ー`)☆
2006/03/05(日) 22:20:04 | URL | まり☆ #-[ 編集]
んー・・・お幸せに(*´ェ`*)
フリフリ ヾ(・д・。)マタネー♪
2006/03/05(日) 20:31:49 | URL | こみゅ #-[ 編集]
俺も初めビビッたっちゅうねん。
だってお前やん?
縛った女にしか勃起しないという噂の(笑)お前がよ?
なんで男相手なん、ってね。
ルックスかてガチンコ男やし。
いやぁ、ホンマおまえって
意外性の玉手箱やぁ~♪♪(彦麻呂風味でお送りしています。)

ちなみに俺は
お前の性癖に善悪のシールを貼る気はない。
むしろそのボーダーレスさ、無秩序さがスキ。
お前とバイセクシャル、すごく似合ってる気がするから。
2006/03/05(日) 18:32:35 | URL | シンゴ #0iyVDi8M[ 編集]
・・・(*ノωノ)
なんだろうなぁ。。。恋児サンの日記読んでると、最後にはニンマリ笑っちゃってる自分が居てますヾ(;´▽`A汗; 恋愛関係別にして、一緒に幸せになろうって思える相手が居るのって、良ぃですね(。-∀-)ニヒ♪
2006/03/04(土) 23:26:03 | URL | han (*´ч`*)♪ #-[ 編集]
あぁ。。。ミカサさんの気持ちわかるなぁ。
私は坂本君が「僕おかまだから」って言ったときに背後の透明人間にヒザカックンされたみたいによろめいた・・・けど、もちろん本人の前じゃ、至極普通に「へぇ~、そうなんだぁ~」と。

本当は頭の中ぐるぐるしちゃって、立ち直るまでに半年ちかく費やしたよ。

今だって、まだ合点がいかない。・・・私って往生際が悪いのかしらん?

ミカサさんも晴天の霹靂だっただろうね。
2006/03/04(土) 21:34:01 | URL | sora #-[ 編集]
ご馳走様でした(*´∀`*)フッ
あたいは、わかれちゃった(´∀`)
2006/03/04(土) 20:18:43 | URL | シグ #-[ 編集]
私もコンタくんと同じようにいきなり暴露して彼女から延々と怒られた記憶が・・・・
女はしつこいから思い出すたびに怒られた・・
コンタくん同様、なんかかわったことしてるって感覚がないからぺろって喋っちゃうんだよね^^;
ミカサさん、いいお友達だね^^
2006/03/04(土) 18:14:26 | URL | めぐ 紅 #oDcsh8ug[ 編集]
んー!!幸せ。本家も読みました♪

ほんわかした気持ちでいっぱいになりました。
しかしコンタさんも度胸ありますよね。
かっこいいなあ…ヽ(・∀・)ノ
ブログを読むたびに、恋児さんが惚れるの分かるわーって
つくづく思いますよ。

「メロメロなんは…」のミカサさんの台詞w
親しい人に言われるとうれしさ倍増ですね(oゝД・)b
思わず読んでて笑ってしまいました。
いいお友達ですね。
2006/03/04(土) 15:34:26 | URL | ゆか #-[ 編集]
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