もうすっかり習慣になった朝のジョギングから戻ると家には誰もいなくなっていた。
キッチンは静かで暗い。
神戸在住時代の友人とカニを食べに出かける、とそういえば言っていたオカンの顔を思い出した。
一泊で山陰。たまには羽のばしてこい。いっつものばしてるけど。
いつもはまだ夢の中のはずのかなこも昨晩からいない。
ヲタク友達の家で二泊、らしい。何やらあやしげな漫画を書いたりしてるようだ。
姉貴も親父も仕事。
土曜。
暗くて猥雑でせつない期待がいっぱいにふくらむ朝。
俺は風呂場の脱衣所でジャージを脱ぎながらコンタにメールを打った。
『めずらしく家ン中からっぽ。はよ来いや』

土曜の夕方にやってきたコンタは、流れていたＣＭをみながら呟いた。

「あー、なんかケンタッキー行きたい」

もちろん地名ではない。
俺だって行きたくない。どうせ行くならサンタフェだ。
彼が行きたいのはアメリカ資本のから揚げ屋である。
２０周年だとかで最近よくＣＭを見る。
ようするに
ケンタッキーフライドチキンの６ピースパックが食べたい、ということである。

義理チョコの食いすぎで吹き出物ができた。
最悪だ。
出来た場所がエラの部分だというのは一体どうよ？
目立たないけどやたら痛い。

思いも吹き出物もここぞとばかりに垂れ流し。
あちこちが痛くなる。


だからオレは１４日が嫌いなのである。

歌。
音楽。
匂い。
空気。


そんなものに誘われてトリップする思い出への旅が、俺は嫌いではない。
すれ違うＯＬの香水に、思いだす人妻。
夏の早朝、酔い覚ましがてら歩く町の空気に、思いだす某コスメ会社系列研究室勤務の女。

数日前。
母親に頼まれた買い物の途中、愛車の中でＦＭラジオから流れてきた曲に、蘇る女の記憶。


女の声の記憶。

以前、某ソーシャルワーキングサイト内のブログに書き殴った日記よりちょっと以下引用。

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好きだからセックスしたいのか
セックスしたいから好きを上書きしているのか。

こんなにいやらしく彼の体を貪りながらそこに愛が存在しているというのか。
愛に理想を抱いているわけではないが
体が心を否定し、心が体を否定する。
こんな肉欲の泥濘に思いが存在できるというのか？
混濁した水の中から清冽な華を生む睡蓮のごとく？

いまさらこんな思いにとらわれるなんて、如何にいままで適当なセックスしかしてこなかったかが知れようというものだ。

好きだからセックスしたい。
好きだからセックスしたくない。
好きなのにセックスしたい。
好きなのにセックスしたくない。

いっそ
心だけで生きれたら楽だろう。
体だけに溺れられたら楽だろう。

心は体の乱行を否定し、体は心の存在を否定する。
しかし残念ながらどちらがかけても俺は存在できないのが現実だ。


・・・・・・・・・以下略・・・・・・・