日曜の朝。
寝乱れた部屋で
俺自作の朝メシを食いながら
あのときブログに叩き付けた思いを今度は口にした。

「好きだからセックスするんか、セックスしてるから好きなんか・・・コンタはどう思う？」

コンタは別に驚いた様子もなくコーヒーを飲みながらさらりと答えた。
「んー。どっちでもありどっちでもなし。」
「わからん」
「ってゆうか何考えとんねん。」
お前の思索好きもえぇけど、あんましネガティブ方向に走るんはオススメでけんな、と付け加えてオープンサンドにかぶりついた。
セックスは気持ちいい。
好きな相手とのセックスはなおさら。
だからこそ俺は怖い。
コンタとの距離は二人の間に肉体関係が介在し始めてから急速に縮まった。
それって、コンタが無意識にでも「俺」でなく「俺とのセックス」に価値を見出しているせいなのではないか。
会えば必ずセックスに溺れる。
何度も何度もむさぼるように。
体が悲鳴をあげても衝動はやまない。
痛みも倦怠感もなぎ払って、繋がりたい衝動が暴走する。
なんで？
愛情の表現はほかにもいろいろあるのに、それだけじゃ満足できないのはなんで？


黙ってしまった俺にコンタがおかしげに笑った。
「恋愛百戦錬磨って噂やったけど違うんや？」
「どんな噂やねん」
俺も笑ったが、すぐにそれも消えた。
思いに保証人はつかない。
本当に俺が、コンタがお互いの「からだ」でなく「こころ」を好きやなんてどない証明できるんや。



「俺はおまえが好きやからお前が男だろうがセックスする。セックスするからまた好きになる。俺は、れん、セックスだけでも、セックスなしでもアカン男やわ。」

コンタが真顔で答えた。

「プラトニックなんか俺の辞書にはあらへんで。男に生まれたんやから、そんなもん仕方ない。言い訳できんやろ。せやけど体だけのつながり、っていうのも俺的にはナシや。」


沈黙のままコンタから目が離せない俺にコンタは更に言った。


「セックスだけやったら風俗いったほうが面倒くさくなくてええ。せやけど・・・・ちゃうやろ？要するにやな・・・・」


・・・・何もかもお前やないとアカンねん。



コンタが俺の顔をまっすぐ見たまま照れず笑わず言ってのけた。


男にあっさり騙される女の気持ちが少しわかった。
ただその一言で少し救われた。

俺の存在価値は肯定され
俺の居場所は確保される。
コンタの答えは常に明快だ。
でも俺の答えはそんなに綺麗に割り出せない。
これまでに重ねてきた軽いセックスのせいで、俺の「こころ」と「からだ」の間には深い裂け目ができてしまっていた。
コンタの明晰な答えはそこに１本の橋を渡しはしたが
その裂け目を埋めるのは俺自身にしかできない。


「割り切れんのやったらムリに割り切らんでえぇぞ。世の中そういうことのほうが多いやろし。せやけどしんどなったらまたいっぱいいっぱいになる前に言えよ」


考えすぎるんも考えモンやなぁ、とコンタは笑った。




そのあと昼過ぎまでだらだらと過ごし、午後からはなんばパークスをぶらぶらして、心斎橋で飲んで深夜帰宅した。
それから
朝方までセックスした。
何度も。
何回も。




いつかこの裂け目は埋まるだろうか。
俺の唯一の懸念である。