2ntブログ
自分の中の両極を、自分の中のけだものを。 制御し飼い馴らす方法を探す旅。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Why I Sing 【res:】
歌。
音楽。
匂い。
空気。


そんなものに誘われてトリップする思い出への旅が、俺は嫌いではない。
すれ違うOLの香水に、思いだす人妻。
夏の早朝、酔い覚ましがてら歩く町の空気に、思いだす某コスメ会社系列研究室勤務の女。

数日前。
母親に頼まれた買い物の途中、愛車の中でFMラジオから流れてきた曲に、蘇る女の記憶。


女の声の記憶。


20歳の時につきあっていた「さちえ」は当時29歳だった。
ある食品関係会社の広告室チーフを勤めていた。
俺にしてはまっとうなルートで出会った(チェロ教室)女で、金銭的・精神的な余裕をもちあわせた、当時の俺の一番好きなタイプだった。


仕事は充実。
結婚願望なし。
マンションは自分で購入。
彼氏はほどほどに切らさない。
セフレは虚しいから作らない。
不倫は二度としない。
去るものは追わず。
激情家。
彼女の部屋はいつも綺麗。
寝に帰るだけやからね、といつも笑っていたが、それだけではない清潔感があった。
片付いたキッチン、切らさないベルギービール。
俺の好きなボンベイサファイアも。
いつも生花が飾られたテーブル。
よく手入れされた観葉植物。
そして彼女の好きな音楽。
時にチャイコフスキー。
時にスティング。
時にミスチル。
そしてその日は、俺の初めて聞く音楽だった。
分野はなんだろう。
パワフルなボーカルと、ソウルフルなコーラス。
こういうの、なんていうんだった・・?
俺はまだどこか冷静な頭の隅で漠然と考えながら風呂からあがったばかりのさちえの手首を掴んだ。
さちえの好みはソフトSM。
普通のセックスに付随する程度の言葉責め。
軽い命令口調、押さえつける手の強さ。
手首を掴み壁に押さえつけてキスするだけでぐっしょりと濡れた。
さちえとのセックスのイメージは、海。
小柄なさちえのマンコは指をいれても圧迫感を感じるほどにきつかったが、それを補うかのように、ものすごい感度を備えていた。
幾度目かのセックスから、シーツの下にペット用防水シーツをひくようになった。
ベッドの上に膝立ちになった彼女の感じる部分を指で責めつづけているとさちえはいつも泣きそうな声で懇願する。
「れんくんやめて・・・なんかでちゃう・・・」
本当はやめて欲しくなんてない。本当は出そうなものを開放したいのだ。少なくとも俺の大脳言語野ではそう変換されていた。
だから無視。
ほどなく奥の方から生暖かくてさらさらしたものがドッと溢れ俺の手のひらを伝って肘まで流れ伝っていく。
シーツにぼとぼとと大粒の雫が吸い取られ、その下の防水シーツが威力を発揮する。
「あぁぁぁ・・・いやぁ・・・」
悲鳴のような声できつく目を閉じたさちえの目尻には涙がにじんでいた。羞恥に絞りだされた涙にすら欲情する俺のS魂。
「すげぇおもらししてもぅたで・・さち」
「おもらしちゃうもん・・」
「じゃぁコレなんや?」
「・・・・・」
たっぷりの湿り気を残すさちえのマンコを音をたててかき回すとこんどは粘りけのある液が指に絡みついた。
ひじまで濡れた腕と指先の粘液をさちえに見せるとさちえは恥ずかしげに顔をそむけた。
曲がかわる。
音楽。
ピアノの伴奏に乗せて、男が英語で短いMC。
拍手。
ライヴのようだった。
さちえがキスを誘った。
さちえは海のような女だ。
どこに触れても液体が溢れる。
寄せては返す波のように、豊かな湿りけ。
女性コーラスによる内なる熱情を抑えこんだような静かな導入部分。
さちえが急いたように俺の唇から手を離すと少し硬くなりはじめた俺のチンコを咥えた。
「ん・・・っく」
音楽に気をとられていた俺は不覚にも声をあげた。
ああ
俺はさちえの唾液にからめとられながら思い出した。
そうだ。
確かこの音楽はゴスペル。
歌は男性クワイアも加わりさらに深みと広がりを増していく。
「ね・・・もう入れて・・・?」


クワイアは神へキリストへの献身を歌う。

MY HANDS WERE MADE TO WARSHIP YOU
OH,LAMP SO TRUE I`M SURRENDER TO YOU・・・

俺の上で腰を振るさちえの二つの胸の振幅をみながら俺はゴスペルの歌詞をなぞっていた。
聴衆も、クワイアも心からの信仰を糧に。


I GIVE YOU MY LIFE,MY LOVE,MY ALL.


くだらんな、とさちえを突きあげながら俺は心の中で信仰や神に唾を吐きかけた。
神なんていない。
信仰なんて幻想。

さちえがまた盛大に潮を吹いた。

汝、姦淫するなかれ。

神の戒めなどどこ吹く風。
俺もほどなくコンドームいっぱいにザーメンを搾り出した。



少しの罪悪感と神への嫌悪感に苛まれながら服も着ずにベッドに伏す俺の耳に、またもあの歌。
「ごめんね、同じ曲ばっかで・・・今度これライヴでやるねん。ちょっと覚えときたくてさ・・・」
「ライヴ・・・?」
「あれれ?ゆぅてなかったっけ?私、ゴスペルやってんの・・・8月なんやけどさ、あ、レンくんも来てよ。」
「ヤだよ・・・辛気くさい」
「ンなことないない」
「俺、無神論者やし」
「そんなんどうでもえぇねんて。私ソロ歌うし。見にきてよ。」



8月某日、なんばHATCH。
クソ暑い中、俺は大学の友人(コンタ♂・タイジ♂・ミカサ♀)と共に会場にいた。
たかがゴスペル、とあなどってはいけなかった。
会場に向かうまでの間にかなりの人出が確認できた。
さちえの所属するクワイアはメイン会場でのオープニングとフルゴスペルにクワイアとして参加するのとは別に、サブ会場(とはいっても広場)でのライヴも予定されていた。サブ会場でのライヴでソロを歌うらしい。
確かにさちえは歌が上手だった。
その時点で俺はカラオケで聞くレベルでしか知らなかったが。
1曲目はあの日ベッドで聞き続けた歌。
そして2曲目が始まるとさちえらしき小さな体がクワイアからソロマイクに移動してきた。

ハモンドオルガンの静かな伴奏。



Someone asked the question Why do we sing?


うだるような暑さの中。
群集でひしめく空気の中。
のびやかで、静かだが力強い声が空気をはりつめさせた。
プロテスタントでもカトリックでもないはずのさちえの歌声が、観衆を黙らせていた。

When we lift our hands to Jesus 
What do we really mean?


パワフルで、ソウルフル。 
安定した音程。
豊かな表現力。
正直驚いて、鳥肌がたった。



「すげぇなぁ・・・・」
タイジが腕組みをしながら感嘆の声をあげた。
隣にいたミカサも頷いた。
「うん、すごいスペックやん・・・下手なプロよりうまいんちゃう?」


When we sing our song
At times we may be crying
And nothing's even wrong ・・・


うわぁ、なんかめっちゃ興奮するワ、とミカサがさちえから目を離さずにミネラルウォーターをあけた。
ステージの上で、小柄なはずなのに妙に大きくみえるさちえと目があった。
軽く手をあげる。
さちえがにっこりと笑った気がした。


Glory hallelujah!
You're the reason why I sing
Glory hallelujah!
You're the reason why I sing


あなたの為に歌うのです。



クワイアの力強い信仰宣言と、さちえの囁くような告白。
ステージ前列近くに陣取った神を信仰する人々が手をあげてハレルヤ、と叫んでいる。
本場のゴスペルのコール&レスポンスを踏襲した、それがたとえ真似でしかなくても魂を揺さぶるような力には変わりはないようだった。


「うわっ、ミカサ泣いてやがんの」
タイジがミカサをからかい、ミカサが泣き笑いながらしゃあないやん、なんか感動してんもん、とタイジを突き飛ばしていた。


「歌の力て、すごいよなぁ・・・」

呟いたのはミカサだったか、コンタだったか。


俺は不覚にも熱くなった目頭を誰にも気づかれないようにサマーニットのキャップを深く被りなおした。

本当に、暑い日だった。



その後ほどなくさちえは上海赴任が決定した。
俺もさちえも遠距離は絶対ムリ、という点で意見は一致し、関係はあっけなく終了した。。
俺の記憶にはいろんな女の子とのセックスのいろいろがおさめられているが、実のところさちえとのセックスの印象は著しく薄い。
ただ残るのは
彼女の歌。
魂を揺るがすような、心を汲み出すような。
そして。
ライブ後のセックスのあとのさちえの言葉。

「今日はれんくんにね、歌ってんで?」


You're the reason why I sing



あとにも先にも、こんなに胸をつかまれた歌はこれだけだった。



この日記を書きながらどうも気になったのでどんな曲だったのかを調べてみた。
ベッドで聞いた曲は

≪MY LIFE,MY LOVE,MY ALL≫

そして
さちえが歌ったのは

≪Why We Sing≫


どちらもKirk Franklin によるもの。



意外なことに、今かかってきたコンタからの電話でこのことを話すと、コンタも彼女のことを覚えていて、実はあのライブのあとすぐ、Kirk Franklin のCDを買っていたという。
今日、持ってきてくれるらしい。


過去の恋人と現在の最愛の間をつなぐ音楽。
それもまたシュールでいい。



コメント
この記事へのコメント
うむ。
ゴスペルはホントスキだ。
歌歌うのもすきだ。
セックスはもっとスキだけどウケケケケ。
2006/02/21(火) 10:16:57 | URL | どんこ #-[ 編集]
■アメミサ■ああ、ゴスとジャズって似てるみたいだしね。アメミサの歌好きはオカン譲りやな・・・w

■玲さん■おお、初コメありがとです。そうそ、なんか思い出って懐かしんで浸るためのものだよね。今の自分を肯定しながら。決して振り返るものではない。
音楽でもスポーツでも芸術でも心を揺さぶられるものは結構好きです。感動してる自分に「あ、俺まだまともやや!」て確信できる瞬間やから・・・
リンクありがとうございます★俺もリンクさせてくださいね。っつかしました(事後承諾。)

■きき■才能・・・!(笑)それはないと思うけど・・
そうやって一人でも俺から発信する言葉で自分を少し見つめることができた人がいればそれはすごく嬉しい。
ゴスペルって観衆も巻き込んで盛り上がれるみたいやね。アメリカのライブのビデオとかみたらすげー楽しそう。一度本場で聞いて参加してもたいもんです。
・・・今でも神は信じていませんが。

■アコさん■中川イサトってもぅけっこうなお年だよね・・・?小松原俊・・・今度聞いてみまっす。
イヤになってもリハビリしないとますます弾けなくなっちゃいますよー(笑)
2006/02/17(金) 12:26:38 | URL | 恋児 #-[ 編集]
押尾コータロー…
やつはなかなかやるな。

マニアックなとこいくと
小松原俊とか中川イサトがオレは好き。

ギター弾こうとすると、腕がさび付いてしまっていて
自分の下手さ加減にうんざりして、すぐやめてしまう…。
2006/02/15(水) 01:19:17 | URL | アコギスト #-[ 編集]
レンジくんの文を読むとなぜかいつも、自分の過去のことに思いを馳せてしまうのだけれど、これもレンジくんの才能なんだろうなぁ・・・
KIKIはあるゴスペル曲を聞くと雪の匂いと火を焚いた室内のちょっと埃っぽい湿った空気を感じます。
おそらくいつだったかのクリスマスの記憶に直結してるのだろうな^^;
音とリンクしてる記憶は不思議に匂いや空気や温度や日差しの感じや・・・皮膚感さえいっしょに蘇る。
・・・今日は寒いけどボサノバ聴いちゃおうっと・・・ww
2006/02/14(火) 12:54:40 | URL | KIKI #A9cyFz3c[ 編集]
音とか匂いとか、記憶の奥深くに根付くよねぇ。
アタシもたまに引っ張り出して聴いたりするよ。
別に未練があるとかじゃなく、
懐かしさとか、当時の若さとか、その頃の自分とか、
思い出しドップリ浸かりたい時もあるw

神なんているかどうか知らないけど、
ゴスペルはアタシも好きなジャンルw
心の奥底に響いてくるカンジがね~。いいw
これが歌なんだって思っちゃう。

リンクしちゃっていい?
しとくから、やだったら言ってね。
2006/02/14(火) 03:16:30 | URL | 玲 #-[ 編集]
んー。
細かいトコなんかなぁ・・・まぁ、突っ込みは私専門ですからね、ふふ。
そそ。
オカンはゴスペルさんっていうか、それも習ってる。
前はジャズボーカルも習ってた。(私の苦手な英語を・・w)
2006/02/13(月) 19:12:32 | URL | アメミサ #-[ 編集]
■そら■嫌いな人なんていないんじゃない?そういう感覚。っつか君は泣きすぎだよね。

■アメミサ■うわぁ。ニヤリって。ニヤリって。アメミサはいっつも細かいとこツッコむなぁ。それもいい感じで。感性似てんのか?オカンもゴスペルさん?ナニワのオカンってハーレムとかでゴス歌ってる黒人女性とパワーが似てるよな・・・。

■なぎさん■はじめまして。コメントありがとうございます。お年は存知あげませんけど、しばし昔に思いを馳せるだけの時間をお過ごしいただけたこと、嬉しく思います。

■アコさん■ギター。アコギなんですよね。俺ギターといえば押尾コータローとか好きだったりcharさんとく大好きだったりなんですが。音楽はいいですね。楽器とか歌って、聴くのも演奏するのも楽しい。新婚生活落ち着いたら是非はじめてください!

■まり■まりちゃんも歌うたったてるんだぁ。芸術でも音楽でも、誰かを感動させたり泣かせたりできる力っていうのは本当に雄弁だと思う。自分がさうなれるとは思ってないけどね・・・w

■ゆか■冬は空気が比較的澄んでいて、匂いが明確に伝わりやすいからじゃないかなぁ。香水って、その人の体臭とまじって匂い変えるやん?そういうのが押さえられるからじゃないかなぁ。コンタも俺のつけてるコロンを街中で嗅ぐと気になるそうです・・・ぐは。
・・・っつか、ゆかちゃんとこってすでにソフトSMじゃない?w

■こみゅ■いっちゃいなさい!年上好きは結構多いし(笑)ちなみに俺は12歳年上まで経験あります。全然違和感ないし。むしろ安定してて人間としてもつきあいやすい。逆はどうかな・・・こみゅ年下相手だとキレそぅ・・・(笑)
2006/02/13(月) 14:27:17 | URL | 管理人:恋児 #0iyVDi8M[ 編集]
いい思い出だねぇ(´ー`)
しかし、9歳差のカップルか・・・
σ(´ρ` )も20歳の子を狙おうかな(ΦωΦ)
2006/02/12(日) 21:55:04 | URL | こみゅ #-[ 編集]
時々、すれ違った人から彼と同じ香水の匂いを感じて
急に会いたくなったりします。
特に冬は。なぜだかは不明ですが。

ソフトSM…いつかしてみたいです(*^_^*)
2006/02/12(日) 17:10:04 | URL | ゆか #-[ 編集]
音楽はいいですねぇ~☆
音楽聴いて、泣けたりすごく鳥肌立ったりそういう感覚すごく好きです^^
久しぶりにちゃんと歌いたいなぁ~><!!
2006/02/12(日) 03:39:12 | URL | まり☆ #-[ 編集]
音楽はいいな。

俺もまたギター弾こうかな…。
2006/02/12(日) 01:29:37 | URL | アコギスト #-[ 編集]
若い頃を思い出しました。
2006/02/12(日) 01:02:57 | URL | nagisetu #-[ 編集]
なんば・・・ゴスペル・・・(´゚д゚`)
もしかしたら、オカンが習いに行ってるトコと同じかもしれん(・ε・)
キャップを深く被り直したレンジさんに思わずニヤリ。笑
2006/02/11(土) 23:44:43 | URL | アメミサ #-[ 編集]
心を揺さぶられる感覚って好き。
私の場合揺さ振られ易過ぎなんだけどね。。。

今日はお芝居を見てきたの。号泣しながら見ていたことを楽屋で友達(出演女優)に伝えたら「どこで泣く?」と半ば呆れながらも私にハグしてきた。

そして、少し体を離して「うーん、いつもいいにおい」って私の香水の香りを胸いっぱいに吸い込んでいた。
私は彼女の記憶の中に私の香りの時限爆弾を仕込めた喜びに浸っておりました。私がいつかキスをしたいと思った女の子。まだ実現していないけど。。。ハグされたときにキスしておけば良かった。(なんの反省会?!)
2006/02/11(土) 23:23:25 | URL | sora #-[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック