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自分の中の両極を、自分の中のけだものを。 制御し飼い馴らす方法を探す旅。
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棘の世界の住人たち【res:】
女の子の柔らかさと、あの湿り気が好き。
我儘だってかわいい。
基本的に女好き、それはきっと今も変わってない。
でもやはり昔の俺とは違う。


正直な話、コンタに性欲を感じてしまった冬の日まで、22年間、俺は男を性対象として見たことはまったくなかった。
嫌い、なのではなく、無関心。
ゲイ雑誌もビデオも見たことがない、というよりは目にする機会がなかったというのが正しい。
ただ、一度だけその砕片に触れたことがある。




俺は、何を隠そう(隠してないけど)私立男子校出身である。
期末試験も終わり、なんとなく浮き足立った冬の午前中、とある休み時間、購買で買ったパンをかじりながら教室に戻ってくると教室に独特の殺気立ったような雰囲気が満ちていた。
ああまたかよ。
よくあることだ。
俺のクラスは体育会系の荒くれ者が多かった。
殴り合いの喧嘩なんて些細なことで起きる。
案の定窓際に暑苦しい人だかりの半円ができていた。
戻ってきた俺をみつけた笹尾がニヤニヤ笑いながら近づいてきた。
笹尾に頼まれていたカレーパンと釣りを渡すと笹尾が耳打ちした。
「大谷がさ、水田に告ったらしいで?きしょくねー?」
殴ったのは水田、机をなぎ倒して倒れこんでいるのは大谷。
水田はバレー部だが、さして血の気の多い男ではなかった。
その水田が顔を真っ赤にして怒鳴りながら大谷に再び殴りかかった。
「ふざけんなボケきしょいんじゃ!」

何度も何度も罵倒しながら。
少し小柄な大谷は一度も殴り返さず、抵抗もしなかった。
はやし立てるクラスメイトの後頭部の隙間から俺はその様子を見ていた。
俺はそのとき、ただの傍観者だった。
何の感動もなく共感もなく同情もなかった。
菓子パンを食べながら俺はただその光景を見つめつづけた。
なぜ水田がここまでキレるのか
なぜ大谷がこの理不尽とも思える暴力に甘んじているのか
という疑問だけが俺にはあった。
他クラスにいたバレー部のマネージャーが駆け込んできて水田を羽交い絞めにして止めるまで、大谷は顔となく体ともなく殴られつづけた。
騒ぎを聞きつけた担任が怒鳴りちらしながら乱入していつもと同じ喧嘩の幕引き。
それでもなおボケ、死ね、ざけんな、と唾をとばしながら友人を罵倒する水田に、鼻血と腫れで顔が変わった大谷はただ
「ごめんな」
とだけ言った。


その後数日、大谷は教室に姿を見せなかった。
そのまま春休みを迎え、新学期に噂好きの笹尾から大谷の退学を聞いた。





俺の記憶の海の中に沈んでいた小さなこの記憶がナゼ唐突に姿を現したか。
昨日の朝、MSNのサーバにメールが届いていた。
ブログからのコメント通知以外に二通。

一通目。
知らない個人のアドレス。
見ると
俺のブログに対する嫌がらせだった。
確実に某巨大版の住人の匂いがするタッチで、俺への、そしてブログへの執念深いまでの憎しみと悪意が延々と続いていた。
見ず知らずの人間からここまで口汚く罵られる覚えもないのだが。
腹が立つなら読まなければいいのに、かなり読み進めている様子。
語彙も乏しく理論だっておらず支離滅裂で読みにくいこと甚だしかったが、どうやらその人物の怒りの根源は同性愛にあるようだった。
放送禁止用語を駆使して、同性愛者を罵倒し否定し憎悪しつづける。
死ね、という動詞が合計12回、「気持ち悪い」という形容動詞は11回使われていた。
一応慇懃丁寧に返事を書いて送信したが戻ってきた。
匿名、所在不明。
あからさまに突きつけられる悪意。
ネットではよくあることだった。






そして二通目。

某同窓会サイトからのメールである。
メールボックスにメッセージが届いているという。
所長にすすめられるまま特にこれといった希望も意志もなく登録させられたのが2週間ほど前。
俺の同期の登録は約30人弱。多いのか少ないのかわからない。
名前を知ってるやつがちらほらいるな、程度。
メールボックスを覗いていて驚いた。
差出人は水田だった。
3年間のうち、2年間同じクラスだったがさして仲がよかった訳ではなかった。
同じ体育会系でもタイプもジャンルも違う。
水田のバレー部は爽やかスポーツマン系だったがラグビー部は荒くれキン肉マン系だった(謎)
接点は「同じクラス」以外殆どといっていいほどなかった。
最近サイトに登録して俺の名前を見つけたらなんか懐かしくなったとのこと。
高校を出て就職し、早くも二児の父をしているらしい。



差別と罵倒と水田。
この二通のメールが記憶の呼び水となった。


いじめや差別は傍観者も同罪である。
俺は確実にあのとき差別する側にいたのだ。
あの当時もう奔放なセックスを経験済みだった俺にタブーらしいタブーは存在してなかった。
だから大谷のそれだって、ナースもののAVが異常に好きな柴田やスクール水着に興奮する荒木とかわらないと思ってた。
柴田も荒木も大谷も、それに俺だってかわらない。
でも俺はあの時、水田を止め、大谷を助ける気はまったくなかった。
みんなが俺と同じ考えではないことを知っていたからである。
隣で「キッショー」とカレーパンをかじりながらもごもご言っていた笹尾のように。
差別を受け孤立するのは怖くない。
ただ面倒だった。
止めるのも助けるのも、あとで誰かにあれこれ詮索されるのも。
言い訳はいい、要するに俺は逃げていたのだ。
そして今、二通のメールの前で、どうしようもない罪悪感に駆られている。
大谷、俺はおまえと同じ世界の住人だ。
助けてやれなくてごめん。



あれから大谷はどうしただろう。
いまごろ大谷はどうしているんだろう。
もう思いだせない大谷の顔。
懸命に思いだそうとしながら、水田にメールを返した。
GW明けの火曜の夜に会う約束をした。






水田に聞いてみたい。


「大谷のこと、覚えてる?」









コメント
この記事へのコメント
【res:】
■きき■ありがとう。
実はちょっと自己嫌悪してたんだよねー、記事書いたあとから、コメント返ししてたときも。
ただの偽善者ぶってるだけなんだよな、俺って、って。
自分の思考は無駄ではないだろうし、それによって気付く愚かさも前に進める力もあるんだけども。
ちょっとラクになりましたw
2006/05/11(木) 07:59:52 | URL | 恋児 #-[ 編集]
みんなのコメント内での会話で安心した(*´ー`)
でも、読んで最初に思ったことを一言。w
私はね人を救えるかどうかということと、救いたいと助けたかったと思えるということは
別のことだと思うんだ。
行動としてなにかのアクションをすることよりも
何かを心に感じてそれをを思うことに時間を費やすことの方が
大事なことだってある。
と、いうことをKIKIは思いました。
2006/05/08(月) 17:11:31 | URL | KIKI #A9cyFz3c[ 編集]
■どんこ■あれだけ他人を罵倒した時点で、多分水田の中には何か残ってると思うねんけどね。年齢を重ねると人は丸くなる。水田はどうだろう。
でも、俺ホント、水田のこと知らないんだよねー・・・(笑)

■けいさん■面と向かってはいえなくても、文章にすれば伝えられることも多いです。特に俺は。だから俺にこういうツールが与えられていることがすごく有難い。
いろんなことを伝えられる。
俺も、自分の恥部から目を逸らすことは自分を否定することだと思います。
ひとの垂れ流すいろんなものに、無意味なものなんてない。
無意味なものなんて、世界には何ひとつない。そう思うとすごくラクになります。
バカな自分だって、前に進むために必要な存在。

自分で言うのは平気なのに言われるとめちゃ嬉しいね・・・恥ずかしいというか。
羞恥プレイ並みに恥ずかしくて、感じる。
・・・俺もですよ、けいさん。
2006/05/03(水) 11:55:29 | URL | 恋児 #-[ 編集]
『感謝します』、か
思いついたことをただ並べただけなのに、こんなに丁寧に受け取ってもらえると何だか救われた気がします。すげーうれしいw
その時その時思ったことをきちんと言葉で表せるのが恋児さんの魅力なんだなと、コメント読んで思いました。
『本当に感謝します』なんて思ってても言えないモン=3
この日記が無かったらオレもコメントしなかったろうし、今考えてる色んなこともなかったろうし、だから、愚かしいとか思わないで、この日記も必要だったんですよ、きっと。

こうやって1つ1つのコメントを真摯に受け止められる恋児さんと知り合えたコトを心から嬉しく思います。
2006/05/03(水) 10:52:31 | URL | けい #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2006/05/02(火) 12:42:46 | | #[ 編集]
うん。
聞きたい気持ちはわしでもある。

けどそこまで罵倒した過去。
やりすぎたな・・・ってちょっとでも思ってくれるような人であって欲しいな。なんて 甘い思惑がございますホゥ。
2006/05/02(火) 09:23:55 | URL | どんこ #-[ 編集]
【res:】
■アコさん■痛いぐらいわかります、大谷の気持ち、今なら。
俺も本当にそうでした。もしあの時コンタに何を言われても俺には言い返す言葉はなく殴り返す腕もなかったはず。高校時代は本当の意味で同性愛者であることの云々以前に恋というものが判ってなかった。
俺がこれまで自分の中で一過性の思考としてかたづけていたものを日記に書くことでいろんな人の意見を聞ける、それによってバカなことをせずに済むというのは本当にありがたいことだと思います。 今回、つくづくそう感じています。
もちろん、大谷の話には触れないでおきます。
・・・俺のためでもありますもんね。
アコさんいつもバカな俺を心配してくれてありがとう。

■アメミサ■ほんと、血迷ってる!(笑)頭が冷えて読み返すとただのおせっかい熱血バカだもんね。でも都合よく忘れてしまうこういう愚かしい考えこそ形にして残しておいて同じ轍を踏まないように刻まないと。え?違う?w
ちなみに俺は酒に酔ってぽろり、と言ってしまうタイプではないのでご安心をw
こんなややこしい日記にコメントありがとう。さすがアメミサだ。

■けいさん■いや、本当にしにくいと思うwコメント投稿規制かけたらよかったですね。無理にでも書いてくれてありがとうございます。
ああ、そうか。コメント読んで思いだした。けいさんの日記。
そういうの、ちゃんと先に思いだしてたら、そしてけいさんの日記を読んだときの自分の心の動きを再現できてたらこんな愚かしい日記は書かなくて済んだ・・・
あの時傍観者だった俺が何もしなかったのは正しく、そして今更のように何かできなかったかと足掻く俺はちょっと勘違い。
俺にできることは、当時も今もまったくない。
よく考えたら、そういうのは俺のスタイルでもない。
けいさん。
あなたがどんなときも言葉を俺に届けてくれること、本当に感謝します。

2006/05/02(火) 07:24:58 | URL | 恋児 #0iyVDi8M[ 編集]
ん~…コメントしにくい。ゴメンナサイ。
何かもやもやっとするんですが言葉にならないです=3

覚悟、と行動、ただその結果。
甘んじて殴られたのは、罪悪感、から。
傍観者に出来ることは、ない。

…ははっ、何とか言葉を捕まえてみたんですが、よくわかんないですね(汗)。

大谷さんの気持ちがわかるとは言いませんが、同じ状況なら多分オレも同じように、罵倒も非難も暴力も甘んじて受けると思いました。
2006/05/02(火) 02:11:25 | URL | けい #-[ 編集]
何やレンジさんてば、ちょっと血迷ってる(笑)っぽかったけど・・・

もうコメント見る限りは大丈夫そうなので良かった(* ^ー^)
お酒飲んで酔うて、ポロッと言ってしまわないようにだけ気をつけてヾ(。´д`)ノ
2006/05/01(月) 18:50:01 | URL | アメミサ #-[ 編集]
レンジは大谷のことを自分と重ねあわせてんのやろ?
だったら大谷の気持ちも察してやれるやろ?今なら。

あのときの大谷と水田はレンジとコンタだったのかもしれない。
レンジがコンタに告ったときも、激しい罵倒と理不尽な暴力を受けるかもしれないという覚悟はあったやろ?
恋なんてうまくいくときがあれば、うまくいかないときもある。二人にとって終わった事であれば、今更他人が掘り返す必要もないだろ。

ただの傍観者のまま最後の質問をするのなら別にしてもいいが(水田が大事な友達でもなければ…な)、大谷を自分と重ね合わせて見てるのであれば、やめといたほうがええやろな。
2006/05/01(月) 09:19:46 | URL | アコギスト #-[ 編集]
■慎さん■こんにちは。レスありがとうございます。
そうですね。その方がいいのかもしれません。
覚えてない・忘れている・知らない顔をして彼と酒を飲むのは簡単なことです。
過去の自分に責任を押し付けるつもりもないしかといって現在の俺に何かを課するつもりもまったくありませんが、どうしても胸が痛い。
俺が両性を愛せる人間であるという事実が変わらない限り、大谷の味わったであろう挫折はきっといつでも俺の隣にもある。そう思うとなんかせつない。
今まで忘れてたくせに思い出したとたん今更ながらのシンパシー。当事者にとっては大迷惑w
大谷もきっと余計なお世話だと思うでしょうね。
・・・・

当日は普通に子供の話振って普通に酒飲んで帰ってきます。
おかげさまで頭が冷えました。
ありがとうございます。
2006/05/01(月) 07:35:43 | URL | 恋児 #-[ 編集]
聞かんでもええ。
期待する言葉は出てこうへん。
誰のせいでもないし、あんたのせいでもないから、自分責める理由作ることないで。
男に告白されて、過剰反応示した理由は何やろな。
結婚しとう男の寝た子起こすこともない。
2006/05/01(月) 02:10:25 | URL | 慎 #JalddpaA[ 編集]
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